「忍足!ちょっと、いい?」
「(ぎく)……ええよ?」

 

夏休みの部活中からなんかを様子がおかしーと思っとったが、夏休み最後の練習が終わったあとでそんなことを言うてきた。

 

は俺がうなずいたんを見るとつかんだシャツから手を離して、部室の真ん中にある長机の前のイスにかけた。

 

「まあ、座ってよ(ふー)」

「(ふー、て)まあ、座るけども……どしたん?ため息なんてついて。こないだっからなんやおかしかったけど」

「え?!あたしおかしかった?!」

「そらまー、朝っぱらからセクシーなのキュートなの~どっちが好きなの~?迷うな☆…なんて歌ってればおかしーやろ」

「え?!あたし歌ってた?!」

「しかもすごいローで。うつろな目で。びっくりしたわ。お前あややキライなのに」

「あんたが帰り道で歌ってっから覚えちゃったのよおお!!ちくしょう!」

 

たしかにとはだいたい部活の後はいっしょに帰っとる。て言うても付き合うてるわけやないよ。
マネージャーのとはなんやウマが合うわけで。転校してきて以来のマブダチなわけで。

 

「そんで?なんなん?」

「そっっっっ、そそそそ、そうそう。相談がぁ、あるんだ☆忍足☆てへ」

「……うん。そんな前フリいらんから、な、ちゃっちゃ言うてみ?」

「生ぬるい目で人を見るな。このアイドルオタク」

「俺はあややが好きなだけやもん」
「もんとか言うな。っ…………ああ、でもあたし……おかしかったのって……みんなにばれてた?」

 

は頭を抱えて上目づかいに俺を見た。

 

「いや、多分俺だけやろ」

「ほっほほほほほほほほんとにっ?!あっ、あの…長太郎とか…宍戸とか…樺地とか…ええと…跡部とか……」

「せやから大丈夫やって。ほんで?なんなん?」

「え、ええっとーええっとー…………」

「ふんふん(あ、枝毛できとる)」

「ええっとー……だからぁ……………」

「ふんふん(朝からずーっと直射日光あびっぱなしやからなぁ…)」

「だっからー……あのねぇー…………」

「(切ってまえ!てい!)」

「忍足!!聞いてる?!」

「(ぶち!!)ひいい!」

「……………………………………………………………………………………なにやってんの」

「(急に大声出すな!)い、いや、別に、なんも」

 

ごっそりぬけてしまった髪の毛をそっと部室の床に捨てながら必死でスマイルを浮かべる俺。
さよなら、毛……!

 

「(涙目だし…)キモいよ?」

「キモ……!ひど!誰のせいやと…………。まあ、ええわ。で、なんなん?」

「聞いてなかったでしょ」

「え?き…聞いてましたよ?」

「上目づかいはやめて」

「聞いてましたよー☆」

「……それはあややのマネなのか」

「てへ☆」

「まあいいや……」

「スルーかい!!」

「でね!」

 

 

ドン!て机を叩くはものすごい迫力があった。



「相談なんだけど!」

「ど、どんと来ぃ!」

「わたし!」

「おう!」

 

「…………………………………………………」

 

そこでは顔をそむけてもうた。

「なんやのー。らしくないでー」

「……………………………………………………………」

 

そむけた顔をのぞきこむと、のほっぺたはちょっと赤なってた。(まあ!)

 

「もしかして恋の病かー?」

「!」

「(図星や!)」

 

え?え?
そんでこんだけ言い出しにくいっちゅーことは………

 

「え?!あの、いや、俺たちはマブダチやろ?!親友!な!」

「なに勘違いしてんの」

「お、俺やない…の…?」

「っ当たり前でしょーが!」

「だーーーーーもーーーー焦らすなアホ!まじびびったわー!」

「こっちがびびったっつーの!」

「もーーーーーーーーーほんなら誰が好きやの。言ってまえ!言ってまえ!楽になるで~☆」

「(なんかムカツク…)うん………」

 

 

とか言うてまた黙るし。

 

 

「テニス部か?」

「………………………………うん」

「う~ん………あっ、せや!日吉か?!お前、ちょっと前に日吉のこといいって言うてたやん!
日吉!!」

「…………………………………………ちがう」

「なに!日吉は遊びやったんか?!」

「遊んでねーよ!!」

「ほんなら……長太郎とか?」

「…………………………………………長太郎はカワイイけど」

 

そんなら違うんかい。

 

「んー、ほんなら滝?お前あーいう奴好きやん」

「好きだけど………………………………………」

 

またはずれかい。

「じゃあ、思い切って宍戸!」

「思い切りすぎ!」

 

おい思いっ切り笑顔で答えるのは宍戸に失礼やで。

 

「え~……………あっ、ジロー?」

「ううん」

「うー…ん…………あ!もももももしかして、岳人?!」

「ちがう!」

「いくらなんでもな~!」

「な~!」

わっはっはっは。

 

 

 

「……………………………………」
「……………………………………」

「……………………………………え、あと誰かいたか?」

「いるよ!」

「え~……こいつだけは絶対ありえへん!ってのが2人おるんやけど…」

「(どき!)」

「監督!か樺地!」

「そっちなんだーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

「えーーーーーーーーー!はずれーーーーーーーーーー?!もうわからんわーーーーーー!」

 

ガチャ

 

「まだいたのかお前ら」

「あ、跡部ー」

「鍵閉めるからとっとと帰れ」

「ちょお聞いてーなー!あんなー!のなー……」

 

指差したの顔は、赤なってた。

 

「(へ?)」

がどうした」

「いや……いやいやいや!なんでもあらへんよ~!なんでも!あっはっはっはっ!てへへへ☆」

「(なんだこいつ)いいから、早く帰れ。もう暗くなってるぞ」

「あら☆ほんまや~!ーはよ帰るでー!家まで送ったるわ!ほんなら、新学期な!跡部!」

 

 

俺は一言も喋らんの腕をとって、もう全速力で走った!俺がんばった!

 

校門の前まで来て足を止めて、肩で息をつく。

 

ーっっっ!!!!」
「忍足ーっっっっっ!!!!」

 

両手を取り合って絶叫する俺らはたから見たらどーなんやろう、とふと思う。

「わかったでーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「ばれたかなーーーーーーーーーーーーーー?!?!?」

「跡部にか!んむぅ、心配すな!俺が風のようにお前をさらったからな!」

「忍足すてき!かっこいい!」

「せやろ?ルパン並みの鮮やかさや!」

「惚れるー!」

「いやいやいやいや、そんな話はどーでもえーねん!」

ここでお互い深呼吸。

 

 

「跡部かー!」
「跡部だー!」

 

 

「跡部…か……!」
「跡部…よ……!」

 

ここでお互い肩落とす。

なんてシンクロ率の高い俺ら!なんてったってマブダチですから!ひゅーう☆
いや、そーいう問題あらへん。

 

「そら思いつかんかったわー…」

「せめてさー…監督よりは先に思いつくでしょー……」

「だってお前、いつも跡部に告りにくる子ーとかわけわからん!言うてたやないの!試合のとき
もマネージャーのくせに、ありえへん言うて1人だけ跡部コールしないやないの!」

「それはいまでも思うけども!」

「なんでそれが………恋は突然にもほどがあるで!きっかけはなんや!」

 

歩きだしながらたずねるとは、またちょっとほっぺた赤くして「えっと」て言うた。
(今日だけでなんべんこいつのえっと聞いてんねん)

 

「こないださ、わたし練習途中で帰ったじゃん」

「あーすごい暑かった日なー」

「わたしへばっててさー」

「生理やったしな」

「そうそう」

「ほんで?」

「でも、みんなにタオルとか渡さなきゃいけないし、コートの外で立ってたじゃん」

「立ってたなー」

「で、跡部に渡したときね」

「おう」

「みんな、サンキュ!とか言ってもらってくでしょ」

「まぁ、せやな」

「跡部は」

 

 

「跡部は」、言うたときのはなんだかいつものではなく。
なんだか俺はびっくりしてもうた。

 

 

「『お前、帰れ』って言ったの」

「え?!」

「わたしが『は?!』て言ったら」

「そ、そら言うわ!意味わっからんわ」

「『死相がでてんだよ』って」

「……!!俺様な言葉に隠した憎い気遣い!!」

「風が吹いたね」

「……」

「わたしの心に」

「吹いてしもうたね…」

「恋風がね」

「恋風……!」

「しばらくはさ」

「しばらくは」

「いや、これはただの突風だ、と」

「うん」

「言い聞かしてたわけなんだけど」

「まあ、跡部やからなぁ」

「跡部だからさぁ。でも」

 

と足を止める

 

「やまないんだよね、恋風!」

「わはははははははは!」

「どうしよう!どうしよう忍足ー!!!!!」

「恋風に乗れ!!!お前はメリーポピンズや!!!!俺はお前の傘になる!!」

「忍足ー!!あたし飛べるかなー!!!」

「飛ぶんや!飛ぶんや!告れ!」

「え、えええー!展開はやー!」

「何を言う!相手は跡部やで!見切り発車でも遅いくらいや!」

「よよよよよよくわからないーーーー!!」

「心配すな!俺がついとる告れ!俺の知るかぎり跡部、彼女つくっとらんし!」

「でででででもーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

「まずはリサーチや!」

「えっ?」

「メールでみんなに聞くんや!」

「なっ、なんて」

「『跡部の好みはセクシーなのキュートなの、どっちがタイプよ~☆知っとったら教えてや!』
て!それ!」

「! それって…!いま、みんなに送っ…?!」

「あとは待つだけや~☆」

「……………(うっそー!)」

「さあて、こいこいー!!」

「忍足なんか楽しそうだし!」

「なんや楽しなってきたもん!ええやん、なんや青春やわー☆」

「でも跡部だよ?!ねえ!」

「跡部かて男や!ムラムラもするし恋もする!」

「ムラムラっ…て…!!」

 

そんときケータイがブルブル震えた。
それを見たも「ぎゃっ」言うて震えた(プッ)

 

「…穴戸や!意外にマメな男やからな!さ~て、なんやって~?」

 

『  穴戸  Re:知るか  』

 

 

「「……みじかっ!!」

「なんなんこれーーーーーーーーーーーーー!」

「しーしーどー!」

「話しにならんわ!期待はずれな男やで!」

「穴戸のあほー!」

「あっ、またきた!」

 

『 滝  Re:え?

どうしたの急に。忍足、跡部のこと好きなの? 
ちなみに僕は美貴っぺのほうが好きだなぁ  』

「美貴っぺやぁ?!ぺっ!ぺっぺ!滝のやつ、せやったんや!明日っからアンチや!」

「滝くん……!(ショック!)」

「つぎやつぎ!なんやメールたまってとるで!」

「つ、つぎは誰?!」

 

『 長太郎  Re:もしかして
先輩がらみですか? 跡部さんの好きなタイプ…ちょっと俺にはわからないですね。
役にたてなくてすいません。  』

 

「気っ…!」

「気づいとるーーーー!気づかれとるーーーーーー!むっちゃうけるーーーーーーー!長太郎、
鋭いなぁ!わはははははははは!」

「う、うそ……!長太郎に…?」

「わっはははははは!つぎいこかーーーーーーーー!」

 

『 岳人   Re:迷うな~☆
跡部の好きなのがキュートかセクシーのどっちかは知んねぇけど、俺的にセクシーなのはダメだと思うぜ!だって跡部がなんつーかセクシー?だからな!ぎゃはははは!対抗意識もっちゃうんじゃねーの?まーそれもおもしれーけど!ぎゃははははは!  』

 

「たしかに…!ぶっはははははーーーーーー!」

「向日……!(笑うな忍足!)」

「次は…樺地や!」

「樺地!(期待大!)」

 

『 樺地 Re:ウス
そういう話はきいたことないス。
スンマセン。  』

 

「うーん樺地にもそういう話はせえへんか……」

「樺地で最後?」

「いや、日吉にも送ったんやけど……あ、きた」

 

『 日吉 Re:
知りません。』

「無理して返信しなくてもええのに…(プッ)」

「返信したくないけど、しなくても後で気にするタイプだからね…日吉…(プッ)」

「まーこれで、みんなっから返ってきたわけやけど…あんまし収穫なかったなぁ」

「あれ?ジローくんは?」

「ああ、送ったけどあいつは寝てるやろ」

「あ、そっか」

「んーで、どないすんの?」

「いや……どないもこないも……」

「まあ、いきなりは無理やろーけど、いつかは気持ち伝えたほうがええで?」

「……………うん」

「あたってくだけろやってー!骨は俺がひろったるから!」

「……うん!頼むよー侑士くん!」

「わっはっはっー!まかしときー! !」

「ぎゃっはっはっはっ!」

「ぎゃっはっはっはっ!……ん?」

 

手に持っとったままのケータイが震えだした。

 

「お、ジローかいな」

「起きたのかな?」

 

 

 

『  跡部 Re:  』

 

 

 

「……(ひい!!)」

「え?なにコレどゆこと?!忍足!」

「……………どーゆーことでしょうねぇ、ええほんま侑ちゃんようわからんわ」

「…つまり、ほんとに氷帝のみんなに送っちゃった、というわけ、ね」

「グループ送信で、な☆てへ☆」

「てへじゃねえーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!本人に送ってどーする忍足っっ!!!!!!」

「だ、だいじょぶやってー☆お前の名前はだしてへんし~☆」

「ということは、がからんでるんだな」

「やぁ、せやから安心しぃ……って…」

 

 

 

そのとき俺は
街頭の光の輪の中に
もう1人の長い影がはいってくるのを
見たわけで。

 

 

「あっああ、あ、あああ!(跡部!!)」

「(ぎゃあ!!)」

「で、このメールはいったいなんなんだ?」

「ど、ど、ど…どうしてここに!」

「あーン?ここは駅までの通り道だろーが」

「(しもた!)」

 

 

 

俺は
まず跡部との距離を目で測り(おし、いける!)
の顔を見て(堪忍な!)

 

「お、忍足……?」

「達者でな……!」

 

逃げました☆(チャオ☆)

 

「忍足―――――――――――――――――――――――――――――――っっっっっっ!」

 

 

背中を追っかけてくる声が
のものだったか
跡部のものだったか
とりあえず
僕は必死で逃げました。

 

のことは絶対に忘れません(わはは!)

 

 

 

その夜、からメールがきまして。
「げっ」と思いつつも読んでみますと。

 

 

『 
Re:ヒュッフ!
あたしやったよ、やったよ侑士くん!!  』

 

「……………っ?!!」

 

……
ピッ ピッ  …… プルルー…

ピッ

「もしもし――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!
どーいうこっちゃねん―――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

君はともだち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頼りにならないけど役には立つ男忍足